海外に拠点を移す時や一時帰国したときに問題となるのが、「日本の住民票を移すべきがどうか」。
ワーホリや数カ月~数年の海外出張など、人それぞれ生活スタイルは様々です。一般的に、日本に拠点を持つ居住者は短期間であれば住民票の異動は必要ないとされています。
それでは、ワーホリや海外留学、単身赴任で仕事先が海外へ移動になる場合はどうなるのでしょうか。今回は、私が何度も一時帰国をするたびに気づいたことや注意点をまとめました。
住民票とは
住民票とは、「住民の居住関係を公に証明するもの」です。各市区町村の役所で住民基本台帳法に基づき作成し、住民個人単位もしくは世帯単位で作成された記録簿です。
住民票には、居住している人の氏名や住所、生年月日、転入日、転出日などの個人情報が記録されており、住所や世帯などの変更がある場合は、住民基本台帳法に基づき、変更があった日から14日以内にすみやかに届け出る必要があります。
誰が住民票の請求と変更をできるのか
日本国籍のある人が住民票の登録対象であり、日本国籍と外国籍の両方を持つ重国籍者も登録できます。住民票の請求(受け取り)と変更は、本人または住民票に記載されている同じ世帯の方であれば可能です。
その他の代理人が同じように手続きを進める場合は、本人の直筆入りの委任状と押印が必要です。
しかし、引っ越し先に住むのが1年未満の場合や大学などに通うため一度実家を離れるが、卒業後は戻るなど短期間の場合は、住民票を異動する必要はありません。
なぜ住民票を転入・転出させる必要があるのか
住民票を変更しないと、どのようなことが起こるのでしょうか。
- 住民基本台帳法により、期限内に提出しなかった場合、5万円以下の過料が科せられる
- 国民健康保険、国民年金、児童手当、選挙人名簿などの福祉・公共・行政サービスを受けられない
- 本人確認の書類などが旧住所になり、それぞれ変更する必要がある
- 住民票、戸籍謄本などの各種証明書が新住所の役所で発行できない
- 確定申告の手続きの際、旧住所を管轄する税務署で行う必要がある
- マイナンバーが失効する恐れがある
いつ住民票を転入・転出する必要があるのか
引っ越しなどにより、他の市区町村や海外へ住所が変更となった場合は、引っ越し前後の二週間以内に届け出る義務があります。
※同じ市区町村の場合は「転居」と呼ばれ、転居届が必要となります。
どこでどのように住民票を転出・転入するのか
転出する場合
引っ越し前の住所がある市区町村の役所に、引っ越しする日の前後14日以内に転出届を提出し、転入時に必要な「転出証明書」を受け取ります。
届け先 | 引っ越し前の市区町村の役所 |
期限 | 引っ越し日の前後14日以内 |
持ち物 | ・転出届(役所内) ・本人確認のできるもの(運転免許証、パスポート、学生証など) ・届け出人の印鑑 ・国民健康保険証(加入者だけ) ・印鑑登録証(登録者だけ) |
転入する場合
引っ越し後の住所がある市区町村の役所に、引っ越しをした日の前後14日以内に、転出時に受け取った「転出証明書」を持参し、転入届を提出します。
届け先 | 引っ越し後の市区町村の役所 |
期限 | 引っ越し日の前後14日以内 |
持ち物 | ・転入届(役所内) ・届け出本人確認のできるもの(運転免許証、パスポート、学生証など) ・前住所地の市区町村が発行した転出証明書 ・マイナンバーカード(異動者全員分) ・届け出人の印鑑 |
一時帰国者も住民票を転入・転出させることができるのか
結論からいうと、「できます」。入国日の入ったパスポートを持っていきましょう。
しかし、市区町村の役所によって対応が異なりますが、江戸川区役所を参考にすると下記の通りとされています。
(注)外国に生活の本拠を有する方が一時帰国する場合、住所は外国にあるものとされておりますので、転入届は受付できません。(滞在予定期間がおおむね1年以上になる場合を除く)
江戸川区役所|海外からの転入手続きについて知りたい
そうなんです。特別な理由がない限り、一年未満の滞在の場合、自治体によって転入届は受理されなくなりました。
私もコロナ前、日本に一時帰国するたび(一年ごと)、およそ一カ月の短期滞在をしており、そのたびに転入と転出を繰り返していました。
しかし、コロナが少し落ち着いた2022年8月に一時帰国し、再び転入しようとしたところ、「一年未満の一時帰国」という理由で転入届が受理されませんでした。
よくよく地元役所の公式サイトを確認してみると、江戸川区役所同様に、一年未満の日本滞在の場合は入出届を受理できないという記載がありました。
オーストラリアに帰国後、そのことを岡山県出身の友達に報告すると「私は転入できたよ?」と言われ、これは自治体の方針により異なるものなのだとその時に気づきました。
一時帰国者が住民票を転入・転出するメリットとデメリット
住民票があると、さまざまな行政・福祉サービスが受けられます。しかし、それらの行政サービスを受けたいがために、本拠を海外に移したままで、一年未満の一時帰国で住民票を異動させるのは、あまりおすすめできません。
メリット
- 保険証が発行されることで医療費が1~3割負担になる
社会保険に未加入の人が、一時帰国の際に住民票を移すと、国民年金と同様に国民保健康保険への加入が義務付けられます。役所によって対応は異なりますが、その場で保険証を発行できるところもあれば、後日郵送となるところもあります。
海外ので治療を受けるととても高額です。特に歯科医療。私はオーストラリアでアーモンドを間食しているときに奥歯の一部が欠け、急いで予約したにも関わらず、時間が遅いため診察のみで治療してもらえず、後日再度行って詰め物をしてもらい、合計7万円を支払いました。(後日、別の歯が治療されたことを知る。涙)
- マイナンバーが発行される
正直のところ、現時点での一時帰国の際には、ほぼ活躍がないでしょう。しかし、オンライン上での行政サービスを使えなかったり、近年ではマイナンバーがないと銀行の口座開設が不可となる銀行もあるようです。
また、政府が健康保険証を2024年の秋頃に廃止し、マイナンバーカードと一体化することを発表しました。それにともない、 運転免許証との一体化の時期についても前倒しを検討するなど、今後も政府の発表によって重要度が変わってきそうです。
- 子供がいる場合は児童手当がもらえる
中学生以下の子どもを養育している場合、自治体から児童手当が受け取れます。一時帰国であっても住民票がその市区町村に置いてあることで受け取ることができます。
支給額は収入によって異なりますが、一般的には下記の通りです。
3歳未満 | 月額15,000円 |
---|---|
3歳以上~小学校終了前 | 月額10,000円(第3子以降は月額15,000円) |
中学生 | 月額10,000円 |
- 子供を日本の学校に就学させることができる
住民票があることで、転入先の自治体にある公立学校に子どもを通わせることができます。例え短期であっても、時期によって受け入れてくれる学校もあるので、子供に日本の教育を受けさせたいと考えている場合は検討してみてください。
デメリット
- 国民健康保険の支払い義務が発生する
社会健康保険に加入する場合は、国民健康保険に加入する必要はありませんが、いずれかの健康保険に加入する義務が発生します。これは義務なので、例え無職で収入がないとしてもです。
国民健康保険の保険料は所得に応じて決まり、毎年見直されていますが、前年に国内での所得がない、または収入が一定の金額よりも低い場合は、均等割と平等割分のみを負担します。
ちなみに私の場合、無収入なので年間およそ1,2000円発生するようです。これは地方自治体によって異なるので、問い合わせてみてください。
- 国民年金の支払い義務が発生する
しかし、所得や免除区分に応じていくらかの「申請免除」ができたり、50歳未満で本人と配偶者の所得を審査ののち、「納付猶予」が受けられることもあります。こちらも自治体に問い合わせてみてください。
- 住民税の支払い義務が発生する
転入することで、その地域に拠点を持つという扱いになるため住民税が発生します。しかし、下記の事項に当てはまる場合は住民税は発生しません。
1.生活保護法によって生活扶助を受けている人
2.障害者、未成年、寡婦またはひとり親で前年の合計所得金額が135万円以下の人
まとめ
法律が絡み、自治体によって条件なども異なりますが、ズルはいけないということですね。そして、所得に応じて支払う金額も異なるため、幾分か平等性を感じる部分も垣間見えました。
日本と海外在住先で二重支払いならないように政府も対策をとってくださっているようですが、今回のこと以外にも、確定申告などのお金について様々な制度や法が複雑に絡み合っているのだとわかりました。
住民票を日本に置くことで支払い義務が発生するので、海外移住先と照らし合わせて賢く快適に生活をおくりたいものです。