「海外で働く」と聞くと、ハードルが高いと感じてしまう人も多いはず。
恐らくそれは、未知のことが多いからではないでしょうか?
今回はオーストラリア在住歴6年の私が、これまで6か所で働いた経験をもとに、オーストラリアの雇用形態について解説していきます。
知っていると知らないでは大違い。雇用主側とのトラブルを未然に防ぐためにも、ぜひ知識として知っておいてください。
雇用形態とは
個人と企業の間で結ぶ雇用契約を指し、日本では大きく分けて「正社員」「契約社員」「パートタイム」「アルバイト」が一般的です。
近年は個人で仕事を請け負う、「フリーランス」という形態も人気が高まっています。
またその派生で、「ノマドワーカー」と呼ばれる、Nomad(遊牧民)とWorker(労働者)を組み合わせた言葉も生まれました。
これは遊牧民のように定住先を持たず、場所に縛られることなく、カフェやホテル、国外でパソコンやスマホを片手に自由に働くスタイルを表現しています。
オーストラリアの主要な6つの雇用形態について
オーストラリアも日本の雇用形態と似ています。
フルタイム(Full-time)
フルタイムは、毎週平均 38 時間働くことが契約で保証されています。
同じフルタイムでも、期限なしの無期限契約と期限付きの有期限契約があり、いずれも個人と企業の間で契約を結びます。
日本でいう「正社員」と雇用形態が似ています。
フルタイムとして働くメリット
- 有給休暇(Annual Leave)年間4週間分
- 病欠有給休暇(Sick Leave)と介護有給休暇(Carer’s Leave)合わせて年間10日分
- 家族、家庭内暴力有給休暇(Family and domestic violence Leave)合わせて年間5~10日分
- 慶弔有給休暇(Compassionate Leave)都度合計2日分
- 契約解消前は事前の通達がある
- 給育児休暇(一年以上定期的に働いていた場合)
パートタイム(Part-time)
パートタイムは、毎週 38 時間未満で働くことになっており、フルタイムのような週38時間という保証はありません。
しかし、例えば毎週32時間と決めた場合、毎週の勤務時間が32時間前後といったように、同じような割合になります。
フルタイムと同様に、期限なしの無期限契約(Permanent Part-time)と期限付きの有期限契約(Fixed Term Part-time)があります。
パートタイムとして働くメリット
- 有給休暇(Annual Leave)勤務数に応じた日割計算※
- 病欠有給休暇(Sick Leave)と介護有給休暇(Carer’s Leave)勤務数に応じた日割計算※
- 家族、家庭内暴力有給休暇(Family and domestic violence Leave)合わせて年間5~10日分
- 慶弔有給休暇(Compassionate Leave)都度合計2日分
- 契約解消前は事前の通達がある
- 給育児休暇(一年以上定期的に働いていた場合)
※フルタイム同様に働いた場合は、フルタイムと同等の有給休暇となる
カジュアル(Casual)
毎週の勤務時間は不規則で継続的に働ける保証がありません。日本でいう「非正規雇用者」と似ており、いつ仕事を失うか分かりません。フルタイムとパートタイムの穴埋め要因として雇用主側から確保されます。
例えば雇用主のニーズに合わせて毎週シフトが変更されたり、閑散期で仕事がない場合はシフトが入っていても、当日になって仕事を休むように連絡が来ることもあります。
コロナ渦のパンデミックに陥ったときは、カジュアルスタッフが真っ先に解雇されました。
そのような不平等さを埋めるために、カジュアルスタッフの最低時給は他のフルタイムとパートタイムに比べて高く設定されています。
カジュアルとして働くメリット
- 最低時給が他の雇用形態よりも高い
- 定住していない人は数カ月で仕事を変えやすい
- 一定期間長くカジュアルとして働いた場合、雇用主からフルタイムで働くオファーを受けられる(Casual Conversion)
- 介護無給休暇(Carer’s Leave)一回当たり二日間
- 慶弔無給休暇(Compassionate Leave)都度合計2日分
- 家族、家庭内暴力有給休暇(Family and domestic violence Leave)合わせて年間5~10日分
- 無給育児休暇(一年以上定期的に働いていた場合)
交代制従業員(Shiftworkers)
シフトワーカーとは、シフト勤務の労働者がシフト勤務時間に対して追加の報酬を受け取れます。
例えば・・・
業界:ホスピタリティ(宿泊施設)
- 7日間のシフトワーク
- 24 時間年中無休でシフトが継続的に配置され、そのシフトを勤務するために企業に雇用されている
- 日曜日と祝日も定期的に出勤する
この業界には、法律でシフトワーカーに対する特定の労働時間やその他の規定はありません。もし週38時間としてしまっては、ビジネスが成り立たないからです。
早朝や夕方に勤務する従業員はシフトワーカーとは呼びませんが、勤務時間に応じて企業側にペナルティが課せられる場合があり、シフトワーカーは追加報酬を受け取れます。
日雇い・週雇い従業員(Daily hire & Weekly hire)
建築、建設、配管業界では、日雇いまたは週雇いの従業員として働くことができます。
雇用主は従業員に前もってその雇用形態を書面で伝える必要があります。
日雇い従業員は、フルタイムまたはパートタイムとしても働くことができるため、フルタイムやパートタイムと同様に年次有給休暇や病気有給休暇などの権利が与えられます。
だからこそ、事前に雇用形態を書面で確認する必要があるのです。その書面に雇用主側からカジュアル形態での契約の掲載があった場合は、残念ながら有給休暇を取得する権利はありません。
日雇い従業員の権利
- 雇用を終了するために1日前に通知を受けるか、与える権利
- 職人は終了の 1 時間前に工具の収集、洗浄、研ぎ、運搬を行うことが許可される
- ジョブローディングと呼ばれる、休憩時間中にも時給が発生する
詳しくはFair Work Ombudsmanの公式サイトをご覧ください。
アウトワーカー(Outworkers)
アウトワーカーとは、自宅または会社以外のその他の場所で仕事を行う、請負業者または従業員です。繊維、衣類、履物の業界では、アウトワーカーが一般的です。
彼らの仕事は、衣類やバッグ、履物を作ったり、刺繍や縫製タグの切断または仕上げ作業、ボタンなどの縫い付けなどがあります。
アウトワーカーは請負業者として労働することができ、Fair Work Act 2009(FW法)に基づいて労働者として保護されています。
まとめ
時代の流れとともに、様々な雇用形態が生まれています。
しかしやはりオーストラリアでも根強いのが、フルタイム、パートタイム、カジュアルの三形態です。
私はフルタイム、パートタイム、カジュアルの全てをこれまで経験していますが、やはりフルタイムは有給休暇が豊富で働く時間も保証されているため生活が安定します。
なかでもコロナ渦のパンデミックの際は、フルタイムであったがために、仕事を失わずに済みました。
ですが、ワーホリでのオーストラリア滞在となるとやはり雇用形態が限られてしまうのが当然です。
雇用主側も、せっかく教えたのに数カ月で辞められてしまっては、また一からのスタートとなるので、希望としては長く働いてほしいと願うものです。
オーストラリアでは日本と違って最低賃金が年々改正され上昇傾向にあります。カジュアルは雇用形態の中で保証がない分時給が一番高いので、ファームやホスピタリティ産業は特に狙いめです。
悪質な雇用主もなかにはいるので、皆さんも賢く楽しいオーストラリア生活を過ごしてくださいね。