TAFEとは、オーストラリア各地にある州立の職業訓練学校です。いわゆる日本の専門学校のようなところで、Technical and Further Educationの略称でテイフと読みます。
現地の学生はもちろん、留学生も多く在校しており、それぞれスキルを身に着け、資格(Certificate)取得のために選んだコースに通います。
また、私のような大人もキャリアチェンジ、キャリアアップを目的に通う人もいます。
大学と異なる点は、TAFEは実践的で即戦力になるような職業スキルを身に着けます。また、コース修了の時期は内容(学位)によって異なり、大学のように学位が高くなるにつれて、半年~1年前後を要する傾向があります。
その一方、大学では学術的でアカデミックな要素が多く、卒業までに3~4年を有します。
今回は私がTAFEの無料英語コース、AMEPに1年半通った感想をみなさんにシェアします。
もちろん、州やキャンパスによって異なりますので、その点だけお含み置きください。
AMEP(エーエムイーピー/アメップ)とは?
AMEPとは、Adult Migrant English Programの略称でオーストラリア政府が、移民を対象に費用を負担してくれる無料の英語学習コースです。
オーストラリアの公用語は英語ですが、移民の国として知られるオーストラリアのダイバーシティは日本とは比べ物になりません。
そのため、こうして政府が介入して移民の皆が、英語を使ってオーストラリア生活に溶け込み、快適に暮らせるようにサポートをしてくれるのです。
誰がAMEPに通うことができるのか
残念ながら、誰でも通えるというわけではありません。
条件1:対象のビザがある人
下記のリストは一部ですが、移民を対象としているため、ワーホリビザは対象外です。
条件2:18歳以上であること
場合によって、15歳〜17歳の方でも対象とのことですが、あくまでも大人のための英語学習コースとなります。
条件3:英語でのコミュニケーションに不安があり、上達させたい人
帰国子女でもない限り、ほとんどの人がこれに当てはまるのではないでしょうか。
日本の英語教育は、読み書きの学習がほとんどないので、会話でのコミュニケーションに自信のない人が多い傾向にあります。
英語の読み書きに加え、話す・聞くなど会話におけるコミュニケーションに不安があり、上達させたい人にはとても有力です。
AMEPコースに参加する方法
- 各州毎のTAFE公式サイトから問い合わせる
- TAFEの学生窓口に直接行く
- 最寄りのTAFEに電話する
上記いずれかの方法で問い合わせ、自分にAMEPに参加する資格があると認証された時点で、面接とクラス分けのテスト日程を決めます。
私はネットから問い合わせ、メールで面接までのやりとりを行いました。パスポートとビザの確認などがあります。
AMEPコースのクラス分けテストと面接内容は?
決められた日時に受付窓口へ行き、面接官と待ち合わせをしました。
無事に合流し、他愛もない話をしながら面接室へ行き、いつオーストラリアに来たのかとか、オーストラリアの生活についてなど、今の私の英語レベルとオーストラリアについてどれくらい知っているのかを確認するような内容でした。
筆記テストは、最初は簡単なものから始まり、少しずつ読解力が必要なものへと内容が難しくなっていくのが分かりました。
そして、最後のインタビューは少し圧力を感じました。
というのも、私の癖で「Well…(えぇーと)」など答えに詰まったときに発する英語を連発し、一字一句目の前で復唱されながら手書きでメモされていたからです。
あくまでもテストで、面接官は私のレベルを測定するためにやっているのは分かっていましたが、妙に緊張しました。
その後、フィードバックをいただき、通い始める日程を相談して決めました。
私はこの日に自分のレベルを知らされることはなく、後ほどクラスメイトから自分が最上位レベルのクラスにいることを知りました。(笑)
私のキャンパスのAMEPのクラスは全部で5つあるようで、最下位クラスはアルファベットも分からないようなレベルで、主に難民の方々がそのクラスに当てはまっているようでした。
このようにバックグラウンドは様々なのです。
AMEPコースの学習内容とは?
実は英語学習だけで終わらないのがAMEPのいいところ。
分かりやすく言うと、移民向けの新生活応援キャンペーンを年中やっているみたいな感じです。
例えば・・・
- オーストラリアでの生活、仕事、学校で役立つ実用的な英語の学習
- 自分の弱点やゴールに合わせた学習レベル別クラスの分け
- 政府や地域が提供する福祉・公共サービスの利用方法の情報提供
- オーストラリアへ移住した人と友達になれる
- 今後の仕事や学校に備え、将来の計画を立てるサポートがある
- 仕事の見つけるための履歴書の書き方、パソコンの使い方、面接対策を受けられる
AMEPコースの時間は?
生活に合わせて、フルタイムまたはパートタイムを選ぶことができます。
フルタイムは週4日で、パートタイムは週2日。
毎週月曜~木曜の4日間授業があり、もちろん土日祝日は休校で、長期休暇も州ごとのスクールホリデーと同じです。(推測ですが毎週金曜は先生方の授業などの準備期間なのでしょう)
私の場合、フルタイムで仕事をしていたので、パートタイムとして毎週水曜日と木曜日に通っていました。
朝9時~昼2時半までで、モーニングブレイク30分とランチブレイク30分の休憩がありました。
子供がいる友達は、子供の送り迎えがあるようで遅れてきたり、早めに退席したり、結構ゆる~い感じの授業でした。
AMEPのコース期間は?
私が通い始めた当初は、510時間までという期間がありましたが、いつしかその制約はなくなっていました。
調べたところ2021年に法改正があり、必要最低限の基礎英語能力だけではオーストラリア生活に馴染める程度で、就職先を見つけることはとても困難であるから。
オーストラリアで実際に生活をしていますが、全くその通りであると納得です。英語でコミュニケーションがとれると、より生活の幅が広がります。
AMEPコースの先生はどんな先生?
実は、すべての先生が生粋のオーストラリア人というわけでもないんです。
オーストラリアは多民族国家で、様々なバックグラウンドを持つ人が多くいます。それは生徒だけではなく、もちろん先生方も例外ではありません。
私が今まで出会った先生方は、インド、イングランド、イタリア、オーストラリアというように様々でした。
そのため、先生によって英語のアクセントは変わりますが、みなプロフェッショナルで情熱的な先生ばかりでした。
面白いことに、インドにルーツがある担任の先生が体調不良で授業を休んだ際に、生粋のオーストラリア人の先生が代行で授業をして下さったんです。
いつも綺麗なアメリカアクセントの英語に触れていたせいか、それともその先生のオーストラリア訛りの英語が強すぎたせいなのか、7割の生徒がその先生の発音を聞き取れないことがありました。(笑)
AMEPコースに宿題や定期テストはあるの?
もちろん、資格をもらえるのですからテストは毎タームごとにあります。
テスト内容は、クラスや先生にもよりますが、主に学期ごとに習ったことです。テスト前に先生がどの内容がテストに出るか教えてくれます。
教育方針は同じでも、先生によって教育方法が異なりますので宿題があるかどうかは先生によります。
AMEPのコースは誰でも通いやすいようになっている
実はAMEPには嬉しい特典があります。
それは、子供がいる人は無料で託児所が使えるということ。しかし、子供がいる友達に聞いてみると何かと制約があるようでした。
例えば・・・
- 指定された託児所でないと、その費用は全額負担されない
- リスト外の託児所は、全額負担ではなく何割か負担されることになるそうです。
- あくまでも学校にいる間だけ、費用を負担してくれる
- 例えば、別の子が熱を出して迎えに行かなければならない。その場合は学校を早退するので、例え上の子は元気でもお母さんは双方を引き取りに行かなければなりません。
- 子供を託児所に預けて、学校をさぼると後に請求される
- 学校側は毎回出欠をしっかりと正確に記録しています。
もう一つの特典は、やむを得ない事情で授業に参加できない場合は、オンラインで修業を受けることができる。
このようにTAFEのAMEPコースは頑張る移民の皆さんのやる気を全力でサポートしてくれます。
AMEPに1年半通った感想
貴重な友達ができる
正直、学校に通う前は孤独でした。こんな田舎で私のような境遇の人と知り合う機会がなかったから。
通い始めて驚いたことは、実は私の周りにたくさん自分と同じような境遇の人がいたということ。
通い始めた当初は、在住歴が数年経っていました。理由は、移住後2年間はワーホリビザだったため学校に通う資格がなかったからです。
しかし、周りの友達は最初からパートナービザだったため、永住歴としては私の方がみんなより先輩でした。
ですが、面白いことに仕事ばかりしていた私は、オーストラリアの行政・福祉サービスについては知らないことだらけで、友達に聞いて初めて知ったことがとても多かったのです。
友達のほとんどは子供がいて、みんな常にアンテナを張っているようでした。ママコミュニティってすごいですね。
また国籍がバラバラなのはもちろんですが、色んなバックグラウンドを持つ人がいて、自分が世界を飛び回って旅行している気分になれて本当に楽しかったです。
もちろん、国籍や文化がバラバラであるからこそ、カルチャーショックを受けることもありましたが、新しく知ることが新鮮で刺激的で楽しかったです。
オーストラリアで生活する自信が生まれる
学校に通い始める前は孤独で、私の英語での失敗にオーストラリア人のパートナーが共感してくれるわけもなく、フラストレーションが溜まり続ける毎日でした。
しかし、友達ができたことによって傷の舐め合いじゃないけど、失敗談や成功談をともにシェアして慰め合ったり、称え合ったり、それは同志のような存在になりました。
それまでは、パートナーからモラハラのような「もっと英語を勉強した方がいいよ」とか「日本語のYouTube見てないで英語で見なよ」など、チクチク言い続けられていたことがストレスでした。
でも、ちょっとの前進を自分で認められるようになってからは、そんな彼からの心無い一言が気にならなくなり、前向きに楽しめるようになったのです。
先生方も、ちょっとの頑張りをオーバーに称賛してくれるんです。大人になってからこんなに褒めてもらえる機会ってなかなかありません。
嬉しいんだけどちょっと照れくさい感じでしたが、そんな優しい先生方や友達に何度も勇気づけられました。
進路に沿ったアドバイスを受けられる
私はフルタイムで働いていたので、仕事を見つけるという目標はありませんでしたが、なかにはオーストラリアで一度も働いたことがない生徒もいました。
そういう生徒のために履歴書と面接の対策や、週4日フルタイムで通う生徒には、職場体験に行けるプログラムがあり、そこから相性が合えばそのまま雇ってもらうこともできるようでした。
また、TAFEの他のコースを受けたいという生徒もいれば、大学進学を検討している生徒も。
そういう生徒のためには、アカデミックなアドバイスがあり、実際に私も先生からのアドバイスで日本の大学の学位をオーストラリアの学位に変更することができました。
これがどのように役立つのかは今のところ分かりませんが、ないよりかは社会的信用度が上がります。
まとめ
このように、AMEPコースに通うメリットは多くあります。デメリットは、通学・学習の時間がとられるというところでしょうか。
やる気があればその分だけ先生方も全力でサポートしてくれます。
もし機会があれば、みなさんもぜひTAFEのAMEPコースに参加して英語を学びながら、かけがえのない友達との出会いを楽しんでみてはいかがでしょうか。